補足8. 医療用酸素を利用するに当たっての特徴

8.1 医療用酸素の供給配管

比較的大きな病院における酸素の利用の状況は、概念的には次の図で示されるとおりです。

[図]医療ガス配管の図

この図の場合、大きく分けると三種類の容器に納められた医療用酸素が利用されます。

8.2 CEによる液体酸素の受け入れ

第一に一番消費量の多い液化酸素が下段の一番左にある定置式超低温液化ガス貯槽「CE」と呼んでいますが、これは名前のとおり貯槽と蒸発設備・減圧設備などの貯槽周りの付属機器類を含んだ概念です。

医療機関には一月の間に何回、何十回となくローリーで液体酸素が搬入されます。このCEの図の正面に四角の箱が見えますが、この中には貯槽上部と下部の圧力差を検出して貯槽内の液体酸素の液面高さを計測する液面計や貯槽内の圧力を計測する内槽圧力計などが収められています。

酸素の納入業者からCEに納入された量の把握は、この液面計によるか、搬入に利用した上記のローリーの重量をトラックスケールで計測し搬入前の重量と搬入後の重量の差を納入量とする方法によるかの、いずれかによっています。

8.3 液面計の精度

しかしながら、一般的に医療機関ではトラックスケールを常備していないことから、液面計による取引が多く取られています。医療機関側が幾らの納入を受けたかを検収する方法として、このような計測方法の精度は比較的低いものとなります。

その理由は、まず液面計についていえば以下のとおりであります。

液体酸素は、その物質的特質が前述のとおり極めて低温であり、これが常温の中で丁度魔法ビンのような構造をした貯槽の中に保管されている形になっています。搬入の都度、温度の上昇した貯槽内の液体酸素と温度の低い新しい液体酸素とが混合し激しく対流することとなるなど、一般の液体の液面を計測する場合に比べかなり過酷な条件で使用されます。この液面計は、そのような使用条件を考慮して作られているものではなく、製造工場における品質検査も通常の室温の下で行われており、実際の使用条件下では検査時に比し精度は低下していると考えられます。

また、ローリーの納入前後の重量差による計測方法も、納入作業の際、貯槽内の圧力を調整する必要などから、ある程度の量の酸素が失われることとなりますが、この量は計測されず、医療機関側にとってみれば購入数量の減少を余儀なくされます。

8.4 LGCによる供給

上記のCEによる供給は、高圧ガス保安法の規制の保安距離確保が義務付けられており、広い設置スペースを必要とします。医療機関の一部には、敷地の制約からCEの設置場所を確保できない場合があります。このような医療機関では、LGC(可搬式液体ガス容器)による供給が行われております。

この場合、可搬式といっても小型ボンベのごとく移動しながら利用するというものではなく、中身の液体酸素の充填はCEのようにローリーで搬入するのでもなく、LGCを充填工場に運搬して充填しております。

この容器の場合、CEのような購入量の誤差や減少の問題は生じませんが、そのかわり容器が小型であることから、医療機関の使用量の少ない夜間等は、中身の液化酸素が使用量を上回って自然蒸発し、容器の安全弁からこの自然蒸発量のうちの一部が大気中に放出されロスとなる場合があります。

このほか、マニフォールド式自動切換供給装置で使用されることから、液体酸素の残量が少なくなり、容器内圧が低下すると、最後まで使い切らずに予備のバンクに切り替わることから生ずるロスもあります。

8.5 ボンベの酸素と流量計の精度

上記の液体酸素は、蒸発設備などを経由し気体酸素とされ、配管を通って酸素マニフォールドに至ります。この図には、ボンベの絵が片側に三本ずつ描かれていますが、これは通常7000リットルの容量の大型ボンベで、中には圧縮された気体の酸素が入れられています。この設備の目的は、液体酸素の系統が何らかの事故によりダウンした場合などのバックアップ用であります。また、液体酸素を利用できない一部の医療機関や使用量の少ない医療機関では、この容器に入った酸素がメインの酸素供給源となっています。

これらの設備から供給される酸素は、病棟内の配管を経由し、処置室や病室に送られ、各種の機器類を通じて患者に使用されることになりますが、この使用量の把握に使用されるフロート式流量計等の精度は、患者の治療上必要にして十分な範囲内のものとなっています(医療用具として±10%の許容範囲となっております)。しかし、流量計本来の精度としてはあまり精度の高いものではありません。

これらの配管系統とは別個に、例えば患者の移動用ベッドに装着して使用するなど、必要に応じ数百リットルから1500リットル程度の容量の小型ボンベに入った圧縮酸素も利用されます。また、医療機関では、大型ボンベ、小型ボンベのいずれもボンベ内部の汚染を防ぐために、圧力を保持しておく必要があることなどから、中の酸素を残らず使いきることはせずに、一定量の酸素を残留させて、新しいボンベと交換しています。通常の配管供給圧力を維持するため、ボンベの残量は、満量の約4%と言われています。

8.6 酸素の気体の体積把握

このほか、忘れてならないのは、酸素という気体の体積の把握方法であります。

液体酸素の納入容量の把握方法は、前述したところでありますが、いうまでもなく医療機関の末端では気体の形で使用しており、使用量はすべて気体体積(リットル)で把握され、レセプトにも気体体積で記入の上請求されております。現実には、医療機関では前述のとおりの利用形態となっているため、特定治療材料のように、買ってきたものをそのまま使用してその購入価格を請求するという単純なことで済むものではありません。

納入する医療用酸素は、高圧ガス保安法の規定により1atm. 35℃の状態のもとでの、気体の体積換算して充填されております。これは夏季の高温下での配送・貯蔵等を安全に行う目的で、高圧ガス保安法の基準に準拠しているからです。

しかしながら、医療機関において現実にそのような高温の条件下で利用することはまずあり得ないことであり、この温度下での気体換算値は、実際の使用量を計測する条件とはマッチしていません。実際はもっと減少しております。

このほか前記のとおり、液体酸素の購入数量の把握には誤差や減少が生じることや、ボンベ内に一定量の酸素が残留することや、可搬式液体酸素容器の自然蒸発ロスなどを説明しました。これら医療機関内において、実際の使用量と納入量の間に各種のロスが発生することが分かっていただけたと思います。

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