ヘリウムとは、どのようなガスですか?

ヘリウムは太陽の光輝のスペクトル中に初めて発見されたことから、ギリシャ神話の太陽神「ヘリオス」にちなんで「ヘリウム」と名付けられました
図に示すとおり、地球の大気中には5ppmほど含まれ、無色・無臭の不燃性の気体です。
また水素に次いで軽く、沸点は摂氏マイナス269度であらゆる物質の中で最低であり、気球用ガスや医療用MRIの磁石の冷却用などに用いられています

大気中のガス組成
ヘリウムはどのようにしてつくられるのですか?

ヘリウムは大気中に極く微量しか存在しないため、酸素・窒素のように空気から分離する方法は経済的ではありません。
天然ガスの主たる成分はメタンですが、天然ガスの井戸の一部には0.5から1%のヘリウムガスを含むものがあります。これを分離・精製する方法が一般的な商業ベースで行われています。

ヘリウムを採掘している米国の天然ガス田

ヘリウムを採掘している米国の天然ガス田

ヘリウムはどこでつくられていますか?

ヘリウムは天然ガスから分離・精製されることが一般的ですが、ヘリウムを十分高い濃度で含んでいる天然ガスの井戸は地球上の一部の地域に偏在していると言われています。
これは井戸の地層がヘリウムを透過しないことが必要なためで、近年、盛んに開発が行われているシェール(頁岩)ガスの井戸からはヘリウムを取得することはできないと言われています。

ヘリウムはアメリカ、カタール、アルジェリア、ポーランド、ロシアで生産されていますが、なかでもアメリカの中西部には政府の管理するヘリウム井戸および多くの民間精製工場があり、世界最大の生産量を誇っています。また世界初のヘリウム採掘を記念してモニュメントなどが設置されています(写真)。しかしアメリカは政策的に備蓄しているヘリウムの民間への放出を2020年には終了する予定と言われ、一方でカタールでのヘリウム生産量が増加してきており、以前はヘリウムを全量アメリカから輸入していた日本でも、カタールからのヘリウム輸入が急増してきています。

また残念ながら日本にはヘリウムを多く含む天然ガスの井戸は存在しないため、日本ではヘリウムは生産されていません。

テキサス州にあるヘリウムモニュメント

テキサス州にあるヘリウムモニュメント

液化ヘリウムはどのようにしてつくられるのですか?

ヘリウムはあらゆる物質の中で最も沸点が低く、液化するには摂氏マイナス269度まで冷やさなければなりません。これには断熱圧縮と断熱膨張によって気体の温度が上昇、下降する現象を利用しています。

アメリカにあるヘリウムの精製工場ではパイプラインで送られてきた粗ヘリウムガスを精製装置により不純物を極限まで減らしそれを大型の液化装置を用いて液化しています。
液化したヘリウムは特殊な断熱構造のタンクに貯蔵され、同様に断熱構造をもつISOコンテナ(写真)などの容器に充填されて輸送されます。

液化ヘリウム輸送用コンテナ容器

液化ヘリウム輸送用コンテナ容器