極めて不活性で、軽く、特異な現象をみせる、貴重なガス
ヘリウムは最も沸点の低いガスで、分子量が小さく、軽いという性質を持っており、
これらの特性が私たちの生活に生かされています。

ヘリウムの性質

資源

空気中には約5ppmしかヘリウムは含まれておらず、工業的には天然ガス中に0.5%程度含まれているものを精製して利用しています。ヘリウムの含まれる天然ガスは、岩盤の強固なガス田に偏在しており、液体の状態で、日本に年間約1000万m3以上が中東・米国等から輸入されている貴重なガスです。

性質

原子番号2、原子量4.0026。ガスは無色、無味、無臭、液体も無色透明で、物理的にも化学的にも極めて安定した、軽い、不活性のガスです。大気圧における沸点は-269℃と低く、他のガスと比べて多くの特異な現象が生じます。

ヘリウムの利用分野

これらのヘリウムの性質を利用して、我々の生活の広い分野で使われています。

浮揚力利用

ごく身近なところでは、風船・アドバルーン等があり、大型の飛行船やLTAと呼ばれる重量物運搬用の複合型飛行船等も研究されています。

飛行船

呼吸器用

潜水時呼吸用として空気を使用すると、窒素が血液中に溶け込んで、水面浮上時に気泡が生じて潜水病になりますが、ヘリウム・酸素の混合ガスを使用すると、ヘリウムは血液中に溶け込みにくいため、潜水病を起こすことがありません。

潜水服

漏れテスト用

微小な漏れの検知には、拡散係数が大きく分子の小さいヘリウムが最適です。

ヘリウムガスを水道管内に注入し、漏水個所から漏洩したガスを地表で検知することにより、漏水箇所を特定できる技術等に応用されております。

溶接・冶金雰囲気用

酸化や窒素と反応しやすい材料の溶接や溶解・加工に不活性の性質を利用した雰囲気ガスとして使用されます。

溶接作業をする人

極低温利用

ある種の金属材料が液体ヘリウム温度付近まで冷やされると電気抵抗が無くなる超電導現象が起こりますが、この超電導現象を利用し、MRI診断装置、産業用NMR分析装置、磁気浮上式列車(リニアモーターカー)、超電導発電機、超電導ケーブル、エネルギー貯蔵、クライオポンプ、半導体レーザー、低温物理の研究、素粒子研究用加速器、SUQUID(人体磁場計測用)等々、広い範囲で利用されています。

MRI

高熱伝導性利用

熱伝導型検出器を用いて物質の熱伝導度の違いを利用するガスクロマトグラフにおいて、キャリアガスとして熱伝導度の大きい方が検出感度をあげることができるため、もっぱらヘリウムガスを使用することが多いです。

物性的安定性利用

ヘリウムガスは物性上安定しており、化学反応を起こさないので、核燃料棒内部の加圧用、液体燃料エンジンロケットの推進剤を燃焼室に送る加圧用に使用されます。

光ファイバー製造工程

ガラス母材透明化のための雰囲気用並びに光ファイバー素線の線引き工程のための冷却用に使用されます。