“不活性”という特性が、いろいろなところで活用されています

窒素は空気の約78%を占める気体で、無味無臭・常温では化学的に不活性・高温で酸素と化合、高温高圧下では水素や金属と化合するという特性を持っています。
また、沸点が約-196℃と極低温です。

窒素の特性と利用分野

窒素が利用されるのは、主に常温下での不活性と液化時の極低温いう特性を生かした分野です。例えば不活性という特性を利用したものとして、半導体製造があげられます。現在の半導体はシリコンが主たる材料となっていますが、空気中の酸素と化合し、一瞬で酸化被膜を形成してしまうため表面の加工が不可能になってしまいます。このため、製造工程中のシリコン半導体においては、酸素のない雰囲気として窒素ガス中で作業が進められます。現在の半導体に窒素ガスが必要不可欠なのは、こうした理由です。

同様に、酸化を妨げるという理由で食品のパッケージに封入されることも多くあります。コーヒーや鰹節等の風味保持のためにパッケージに封入されているものや、缶入り飲料のうち、お茶などの酸化を嫌うものには窒素ガスが充填されています。

都市ガスの巨大な球形のタンクや、大型タンカーの油槽の点検・修理などで中に人が入り作業をすることがあります。この場合、内部は可燃性の物質で充満しており、静電気の火花一つで爆発する危険性が高いため、一度窒素ガスで内部を置換して安全を確保することが義務づけられています。同様に、火力発電所や原子力発電所などの炉内部における作業時の置換用にも窒素ガスが用いられています。

液化窒素の極低温を利用したものとしては、食品などの急速凍結があります。生体細胞は緩慢に冷凍されると内部の水が膨張し、細胞膜を破壊してしまい、食品は風味を失ってしまいます。液化窒素の-196℃という極低温で一瞬にして凍結することにより、この問題は解決できます。

アルゴンの特性と利用分野

アルゴンは、非常に量が少なく高価なガスですが、高温高圧下においても一切の化学反応を起こさないことから、様々な用途に利用されています。半導体の材料である超高純度シリコン単結晶の製造や製鋼、精錬などの高温高圧下での工程で酸化・窒化を嫌う場合や窒素の不活性では不十分な場合にアルゴンが用いられます。

例えば金属の溶接を行う場合、高温で素材を溶かすことで接合させます。この状態では酸化はもちろん、大気中の窒素でさえ窒化という反応を示します。これらの酸化物や窒化物は接合の強度を落とす作用があるため、これを防止するために、溶接をしている部分をアルゴンガスでシールドすることで溶接の強度を保持するのです。

身近な例としては電球への封入に用いられています。アルゴンガスを封入すると、その寿命を長くすることができます。