2023.01.05
一般社団法人日本産業・医療ガス協会
会長 上原 正弘
謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
2022年も新型コロナウィルス感染症が波状的に猛威を振るった一年でありました。ウィルスが変異を繰り返しながら、全世界では6.6億人近くの方が感染しており、依然として拡大し続けております。
産業・医療ガス部門ともに新型コロナウィルス感染症により影響を受けられた方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、全国の医療従事者並びに会員各位の皆様をはじめ感染拡大防止にご尽力されている皆様に敬意と深い感謝を申し上げます。
さて、引き続き新型コロナ感染症第8波による感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安やエネルギー価格の高騰等、先行きが見通せない状況が続いております。産業ガス・医療ガス業界では販売数量はコロナ禍における数量減から着実に回復しているものの、エネルギー高騰や物価高によるコスト増が顕著となっています。光ファイバーや半導体製造、気密試験等に不可欠なヘリウムガスや希ガス類についても、海外からの供給が低減することにより供給がタイトな状況が続いており、先行きは不透明な状況となっています。
当協会では、政府に対し、電力多消費産業11団体で歩調を合わせ、FIT制度の抜本的な見直しや火力、原子力、再生可能エネルギーなどさまざまな方法を組み合わせて発電するエネルギーミックスの見直しの訴えを実施しておりますが、安価で安定的な電力供給が実現されるように継続して取り組んでまいります。規制改革については、「CE設置事業者での単独荷下ろしに関わる運用」、「食品衛生管理者の選任緩和」、「圧力容器等に関する二重規制の緩和」、「ASUの遠隔監視」、「PH3の充塡量アップ」、「FRP容器の使用期限、および耐圧年数の緩和」の6件のテーマについて取り組んでおりますが、今年も業界のコスト低減や事業効率化に向けて法規制改革提案に対して、実行計画の作成や関係省庁との折衝等を積極的に取り組んでまいります。
脱炭素社会への対応に関しては、圧縮ガス・液化ガス製造業のベンチマーク制度の検討を実施し、2030年度の圧縮ガス・液化ガス製造業分野の共通の指標による目標設定が2022年4月に施行となりました。また、水素ガス社会に向けて水素ガス移動基準の改訂等を実施しています。
昨年は異常気象の影響で「大型で非常に強い台風」の接近・上陸や、線状降水帯の発生に伴う「これまでにない規模の大雨」による風水災害が多発しました。このような中、災害対策の推進として水害や地震津波でのボンベ流失を未然に防ぐ対策や高圧ガス容器の転倒防止対策、ポンプ、モーター等の浸水対策等の検討を行っております。今後最も心配される南海トラフ等の大地震や富士山噴火等についても、高圧ガス製造事業者・販売事業者で作成しているBCPの情報・状況を取り入れながら、業界団体としての役割として安定供給に資する取り組みを今後とも模索してまいります。また、放置容器や不明容器の撲滅についても他団体と連携しながら継続的に取り組んでいきます。災害ではございませんが、昨年は新型コロナが蔓延し累計で実に国民の4人に1人近くが罹患したことから、BCPの重要性を改めて認識した1年になりました。高圧ガスの製造、輸送に関し安定供給のために関係各位のご努力があったことに対し改めて敬意と深い感謝を申し上げます。
高圧ガスに関する事故としては、昨年9月にLPG容器移動中における死亡事故が発生しました。10月には経済産業省より高圧ガス移動中の事故防止についての注意喚起も出されています。在宅酸素療法における火災事故も継続的に発生しています。高圧ガスに関する事故防止のため、事故事例の情報共有や自主基準の検討、ヒヤリハットの集約や患者やそのご家族向け在宅酸素療法火災予防啓発ビデオの制作、医療ガス取扱い者への各種講習会等を実施しておりますが、今後も高圧ガスに関わる事故撲滅を目指し、産業ガス分野、医療ガス分野での活動を積極的に推進してまいります。
また、国際整合化対応としては、海外のAIGA、CGA、EIGAの各産業ガス協会と良好な関係を構築することにより、海外の産業ガスの安全や業務効率化等の技術情報を共有することによって、基準作成の効率化と基準の充実を図ってまいります。昨年は、国際整合化会議(IHC)に参加することにより、「往復動酸素圧縮機安全指針」や「ホスフィンの安全な取扱い指針」の発行に向けての対応を実施しました。本年も多くのIHCプロジェクトへ対応することにより、国際的に協調された基準文書の作成や、国内法を考慮したJIMGA指針を作成し、産業ガスの安全や業務効率化に有用な技術基準を提供してまいります。
当協会では、昨年より進めております、「機能別組織への再編と諸制度の見直しによる運営合理化、適正化にむけた活動」を本年は会員の皆様のご意見を聞きながら具体的な施策を実施していく予定としております。より効率的で合理的な組織にて、「モノづくりを支え 命を守る、インフラがある。」のJIMGAキャッチフレーズのもと、災害対策や高圧ガス安全基準の制定・国際整合化、規制改革等の各施策に積極的に取り組むことにより産業ガス・医療ガスをインフラとして安定供給の実現を目指してまいります。
当協会のウェブサイト(https://www.jimga.or.jp/)に、各施策に関する当協会の活動報告や産業ガス・医療ガスの知識、高圧ガスの取扱い等の安全に関するコンテンツを多数掲載しています。産業ガス・医療ガスを取扱いされている事業者の皆様や一般の方々にも興味を持ってもらえる内容も多く掲載しておりますので是非ご来訪ください。
本年も皆様のご繁栄とご健勝を祈念申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。