2025年 年頭のご挨拶

2025.01.06

年 頭 所 感

一般社団法人日本産業・医療ガス協会
 会長     上原 正弘

 あけましておめでとうございます。

 昨年は、能登半島地震で幕を開け、9月には追い打ちをかけるように能登豪雨が発生しました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。年々、自然災害が多様化かつ大規模化し、会員の皆様はその対策に追われていることと存じます。能登半島地震では従来と違ってインフラ回復に膨大な時間がかかりました。半島特有の地形的な問題があったためです。
 昨今の自然災害は、規模も想定をはるかに超えてやってきます。南海トラフ地震を始め、今後起こりうる広域災害に対して、当業界においても普段からの備えをしっかり行っていく必要がございます。
 ここ何年も斯様な厳しい話題で始めることが続いておりますが、昨年の明るいニュースとしては、1月にJAXAの月探査機「SLIM」が日本の無人探査機として初めて月面着陸に成功し、2月にはH3ロケットの打ち上げが成功しました。H3ロケットの燃料には、液体水素と液体酸素が使われております。また、精密機器に欠かせない半導体も、その製造に「ガス」が使われております。私ども高圧ガス業界も宇宙開発の一翼を担っていると思いますと、日本の宇宙開発競争への本格参戦に期待が膨らみます。
 さて、話しを地上に戻しますが、当協会では、「モノづくりを支え 命を守る、インフラがある。」のキャッチフレーズのもと、1.事故の無い安全な高圧ガスの世界の希求、2.「もの申す団体」としての発言力の強化、3.カーボンニュートラルな社会への挑戦という3つの活動方針を掲げ活動をおこなっております。
 今年も事故の無い安全な高圧ガスの世界に向け、会員の皆さま及びユーザーに向けた保安講習の実施、自主基準の作成など、高圧ガス事故撲滅に向けた活動を推進するとともに、もの申す団体として、高圧ガスの規制改革実現に向けて関係省庁との折衝を継続してまいります。
 また、カーボンニュートラルな社会への挑戦として、昨年より会員各社での対応をJIMGAnewsでご紹介しています。これからも、高圧ガスがカーボンニュートラル実現に不可欠なものであることを業界団体として積極的に広報してまいります。
 ところで、昨今の労働災害防止に係る法令改正では、個別具体的な規制から、国が基準を示し、その達成は事業者の自律的な管理に任せるという傾向が出てまいりました。このような方向性は、現場に則した管理が可能となるという歓迎すべき面もありますが、一方で、中小事業者にとっては、具体的に何をすれば法を満足するのか戸惑うことも多いのではないかと思います。会員の皆様が適切に法対応できるようフォローしていくことも、当協会の重要な役割であると考えています。
 例えば、当協会では昨年10月から「化学物質管理者の専門講習」を開始しました。これは、「化学物質による労働災害防止のための新たな規制」により、来年4月から酸素・窒素・アルゴン(いずれも高圧のガスの状態のものに限る)等も本規制の対象となるためです。
 巷では本規制に対する多くの講習会が開催されていますが、必ずしも高圧ガス事業者にとって判りやすいものではありませんでした。そこで当協会の講習会では、会員の皆様が具体的にどのような対応をしたら良いのかという解説に主眼を置き、また、備えるべき安全データシート(SDS)の事例も紹介しています。規制対象の事業所を有する会員におかれましては、ぜひ受講をご検討ください。
 また、個社では対応が難しい課題への対応として、昨年は日本薬局方の第十八改正に対し、医療用ガスの元素不純物リスクアセスメント対応を行いました。会員企業の協力を得ながらリスクアセスメントレポートを作成し、厚労省との折衝で、会員の皆様はこのレポートに基づいてリスクアセスメントを完了することができることになりました。現在は、第十九改正に向けての準備を開始しております。
 このような取り組みは、業界全体の労力とコストの削減に寄与します。これは医療用ガスの供給を滞らせないことや、医療費増加の抑制となるので、患者さんの利益にもつながるものと考えています。
 こういった会員向け事業の他、ユーザーの皆様へも、高圧ガスを利用する際の安全な取扱いに関する講習会やセミナーを積極的に提供しています。また、当協会のホームページ(www.jimga.or.jp)では、高圧ガスの基礎知識、医療ガスの知識、在宅酸素療法について、高圧ガスの保安に関する各種動画など、高圧ガスの保安に関する情報も公開しております。社員教育等にお役立て下さい。
 さて、当協会は昨年4月より、機能別組織への再編と諸制度の見直しを行いました。また、今年4月より新会費制度がスタートしますが、これにより大幅な減収が見込まれています。本部と地域との連携をいっそう深め、より効率的で合理的な組織として各施策に取り組んでまいります。

 本年も皆様のご繁栄とご健勝を祈念申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。