会員連絡

今井会長の年頭所感

2019.01.17

 

一般社団法人日本産業・医療ガス協会
会長  今井 康夫

新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、輝かしい新年をお迎えのこととお慶 び申し上げます。また、旧年中は格別のご厚誼を賜り、心より感謝申し上げます。本年もより一層のご 支援、ご厚情を賜りますようお願い申し上げます。

昨年は、6月の大阪北部地震、7月には中国・四国地方を中心とした西日本豪雨、さらに9月の台風 21号による甚大な被害、そしてブラックアウトまで発生した北海道胆振東部地震と、相次ぐ自然災害 に見舞われた年となりました。その影響による店舗休業、工場の操業停止、物流網の寸断などが、個人 消費や輸出の下押し圧力として働いたものの、これらは一時的な要因にとどまり、国内景気は総じて緩 やかに回復してまいりました。企業の決算発表を見ても過去最高益を更新する企業が多くあり、東証一 部上場企業の第2四半期決算における最終利益の合計額が過去最高を更新したとのニュースもありま した。国内の景気は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、引き続き回復していく ものと思います。

しかしながら、海外では、通商政策をめぐるトランプ政権と各国との対立により世界経済が混乱する リスク、中東や北朝鮮情勢などの地政学リスク、欧州が政治的に混乱するリスク、米国の金利上昇によ る国際金融市場の動揺のリスクなど、リスクには枚挙にいとまがありません。特に米中関係は、貿易摩 擦のレベルを超え、AI時代における覇権争いの最終戦の様相があります。日本の経営者も覚悟が求め られる時期と感じています。

こうした状況下で、国内のガス需要は大きな伸びはないものの、半導体関連を中心に、総じて堅調に 推移してまいりました。一方で、電力コストや物流コストの上昇が収益を圧迫しており、各社ではシリ ンダーガスを中心に価格改定に取り組み始めています。その中でも特に供給面で非常に厳しい状況に直面しているのが、炭酸ガスとヘリウムです。

炭酸ガスは、ここ数年供給が厳しい状況が続いていますが、昨年も多くのプラントにおいて、原料ガ ス供給元の定期修理長期化や相次ぐトラブルに見舞われ、ドライアイス需要の最盛期である夏場を前に、 十分な在庫が確保できない状況となりました。各社とも、出荷制限や韓国からの輸入、遠距離輸送や出 荷調整などでなんとか乗り切ってまいりましたが、今後の供給力強化のため、新たな原料ガス供給元の 開拓や設備増強などに動いています。

ヘリウムについては、全世界の生産の半分を占める米国で供給が減少する一方で、半導体の内製化に 力を入れる中国での需要急増を背景に、再び世界的に供給が厳しくなっています。天然資源であるヘリ ウムは生産地が限られていることから、供給力低下に伴って調達価格も上昇していますので、各社では ユーザーへの価格改定の交渉に取り組んでいます。

当業界全体に関わる重要な課題に電力コストの問題があります。再生可能エネルギー固定価格買取制 度の賦課金による電力コストの上昇は、業界トータルで、減免措置適用前では163億円、減免後でも 年間55億円にのぼり、大きな負担です。これに加えて電力料金の上昇による負担増は2011年3月 以降で139億円にのぼります。引き続き、電力多消費産業の11団体と歩調を合わせて、関係当局に 減免制度継続など今後の対応をお願いしてまいります。

本年10月に消費税の引き上げが予定されています。当業界が産業ガス・医療ガスの供給という社会 的・経済的インフラとしての機能を果たし続けるためには、消費税の確実な転嫁が必要です。当協会は、 前回の増税時に消費税転嫁対策特別措置法に則った「転嫁・表示カルテル」を公正取引委員会に認めら れた団体でありますが、今回も税の適正な転嫁を推進してまいります。

医療ガス分野では、 「安全推進・事故防止」、「法・規制への対応」、「災害時協定の充実促進」、「MGR の公的地位の向上」の4つの課題に取り組んでいます。地域の方や講師の方のご尽力による医療ガス事 故の撲滅のための「草の根講習会」開催、在宅酸素療法における火気取扱の注意喚起、医療ガスボンベ の取り違え防止、医療ガス設備の安全管理、PIC/S GMPに係る品質標準書や添付文書の改訂、災 害時協定に基づく実地訓練実施とマニュアル見直し、卸売販売業の営業所管理者の資格要件にMGRを 加える働きかけ等々、着実に4つの課題の解決に向かって取り組んでまいります。

産業ガス分野では、放置容器の撲滅に重点的に取り組みます。毎年1000本を超える高圧ガス容器 が放置状態で見つかっています。高圧ガス容器は巨大な危険物であり、一歩間違えると大事故につなが ります。放置容器を撲滅するためには容器管理の徹底が必要であり、これまで取り組んできた容器RF タグやJIMGA-EDIの活用によって、取引先や現場を含めた容器の管理を強化してまいります。

産業ガスは、日本のサプライチェーンを構成する重要な製品であり、また、医療ガスは、ライフライ ンそのものであります。このような特質を持つ当業界の事業が、社会的により一層高く評価されますよ う、コンプライアンスの遵守と保安の確保を最優先に、力を尽くしてまいります。

最後に、本年も皆様のご繁栄とご健勝を祈念申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。