はじめに

産業ガスの運ばれ方の中にはパイプラインによる供給方法があります。大口需要家に対応し、かつ安定供給を確保するために産業ガスの製造工場と需要家を直接配管で結びガスを移送する方法が、石油化学コンビナート、製鋼所、半導体製造工場などで多く採用されています。

パイプライン設備

パイプラインの設備は、(1)ガス圧縮機(2)配管および弁(3)制御装置から構成されています。(図1にパイプラインの構成例を示す)
また、ガス発生設備、ガス圧縮機の定期修理等による供給設備の停止時にガスの供給を確保する目的で、(4)付帯設備としてバックアップ設備があります。

配管の敷設工事

パイプラインはガス需要家との立地関係からその敷設状況により、地上配管、埋設配管、水中配管等があります。
高圧ガス保安法では、配管により運ばれるガスが高圧ガスであるときこれを『導管』と言い、保安確保のため種々の規制を規定しています。(一般高圧ガス保安規則6条の第1項第43号)
配管の敷設工事では数多くの安全対策が施されますが、代表的なものに配管を腐食から守る電気防食(埋設配管の場合)、ピグによる管内清掃作業があります。

電気防食

パイプラインの腐食による事故は経済的な損失を与えるのみならず、安全上極めて重大でありこのため腐食防止については年々関心が深まっています。
配管の防食に対応するための防食技術は進歩してきており、近年はポリエチレン樹脂を被覆した被覆鋼管が埋設配管に採用され、さらに防食の完全を期すため一般に「流電陽極法」による電気防食法の併用が採られています。

図2流電陽極法の概念図

ピグによる管内清掃作業

ピグを使って配管内を全長にわたり清掃する場合があります。これは、配管敷設または交換工事により配管内に異物が残っている場合、ガスの移送と同時にこれが弁や機器などに損傷を与える事が無いように事前にチェックするためで、ピグはコンプレッサーにより一端から管内を清掃しながら片端に向かって圧送されます。
このピグ通しは現地の状況により異なりますがおおむね500~1,000m毎に実施します。

図3ピグ通し装置

保安・メンテナンス

産業ガスのパイプライン設備では、ガスを安全に安定的に供給するために様々な最新技術を採用するとともに、定期的な保守点検を実施しています。
たとえばパイプラインでつながるコンビナートを広域ネットワークで結び、リアルタイムに操業情報を収集・共有化する『広域移送制御システム』を開発し、安定・最適運転と供給が可能となり、従来から実施されている定期的な保守点検と合わせ、パイプラインによるガス供給の安全確保も一層向上しています。